結論
「1日1万歩」という具体的な数値そのものを直接裏付ける強い科学的根拠はありません。この数字は、1960年代に日本で発売された歩数計の商品名に由来するとされており、研究から導かれた閾値ではないと考えられています。
一方で、歩数が多い人ほど全死亡リスクが低いという関連自体は、複数の大規模研究で一貫して示されています。
どれくらい効くのか
複数コホートを統合したメタ分析では、1日の歩数が増えるほど全死亡リスクが低下する関連が示されていますが、効果は歩数の増加とともに際限なく大きくなるわけではありません。多くの研究で、一定の歩数を超えると伸びが緩やかになる傾向(プラトー)が報告されています。
高齢女性を対象にした研究では、1日4,400歩程度でも歩数が少ない人と比べてリスク低下が見られ、7,500歩前後で伸びが緩やかになったと報告されています。
研究の現状
参照している研究は13件程度で、大規模コホート研究とそれらを統合したメタ分析が中心です。対象は健常な成人・高齢者を含み、歩数と全死亡リスクの関連を中心に検討しています。
歩数計やスマートフォンによる客観的な計測を用いた研究が増えており、自己申告に基づく従来の身体活動調査よりも精度の高いデータが蓄積されつつあります。
注意点
- 研究の多くは観察研究であり、歩行量以外の生活習慣要因が結果に影響している可能性があります
- 高齢者や持病がある人では、必要な歩数の目安が個人ごとに異なります
- 急に歩行量を増やす場合は、関節や心肺機能の状態に応じて段階的に増やすことが望ましいとされています
簡単なたとえ
歩数の目安は、決められたゴールラインというより、歩くほど得られるものが積み上がっていく仕組みに近いものです。1万歩に届かなくても、今より少し多く歩くこと自体に意味があります。